Phase 3|VLMブラウザ学習システム

ノーコードでVLM外観検査

検査機の立ち上げは専門職に依存しがち。ブラウザUIなら現場担当者が自分で品種を追加し、しきい値を調整し、NG事例を登録できる。それを成立させる技術背景と、向く/向かないケース。

2026-06-21 / 最終更新 2026-06-21 / Nsight Inc.
01
従来の検査機は品種ごとにフィルタ・しきい値を職人的に作り込む必要があり、立ち上げが専門職に依存。品種が増えるほど工数が膨張します。
02
VLM+オートアノテーション+NG画像生成を組み合わせると、現場担当者がブラウザ上で品種追加・調整を完結できる範囲が広がります。
03
万能ではありません。多品種・少量で外観を言語化できるケースに向き、μm単位の寸法測定はルールベースが優位。両者のハイブリッドが現実解です。
― 1 / 課題

なぜ検査機の立ち上げは「専門職頼み」になるのか

従来の画像処理による外観検査では、品種ごとに照明条件を決め、前処理フィルタを選び、欠陥を切り出すしきい値を調整する——この一連の作業を、画像処理に精通した専門職が手作業で作り込んできました。一品種を安定させるだけでも相応の工数がかかり、品種が増えるたびに同じ作業を繰り返す必要があります。

多品種少量生産が当たり前になった今、この方式は構造的な限界に達しています。新品種が出るたびに専門職の手が空くのを待ち、立ち上げに時間がかかり、現場は「自分たちでは触れない検査機」と付き合うことになります。元キーエンスで画像処理装置を提供してきた立場からも、この「立ち上げの属人性」は業界共通の積年の課題でした。

ここに変化をもたらしているのが、VLMをはじめとするAI技術と、それを現場が操作で扱える形に包んだノーコードのブラウザUIです。

― 2 / 技術背景

なぜVLMだとノーコード化できるのか

ノーコード化を成立させているのは、単一の魔法ではなく、3つの技術の組み合わせです。

TECH 1

VLM(Vision Language Model)

外観の特徴を画像と言語から汎用的に捉える。品種ごとのフィルタ作り込みを減らし、例示と言語化で良否を扱える。

TECH 2

オートアノテーション

正解付け(どこが不良か)の作業を自動で補助。現場が一から全画像にラベルを付ける負担を軽減する。

TECH 3

NG画像生成

不良サンプルは現場で集めにくい。生成で不足を補い、少ない実不良でも学習を成立させる。

従来は専門職が担っていた「フィルタ設計」「正解付け」「不良サンプル収集」という3つの重い工程を、それぞれVLM・オートアノテーション・NG画像生成が肩代わりします。結果として、残る作業は「良い/悪いの例を見せ、結果を確認し、しきい値を調整する」という現場が判断できる操作に収束し、ブラウザUIで完結させられるようになります。

― 3 / 学習フロー

ブラウザ上で完結する品種学習の流れ

ブラウザ学習UIでは、現場担当者が次の流れを画面上で回します。コードを書く工程は登場しません。

① サンプル画像のアップロード

良品・不良サンプルをブラウザにアップロード。撮影済みの検査画像をそのまま使えます。

② オートアノテーションで正解付け補助

不良箇所の候補を自動で提示。現場は確認・修正するだけで正解データが整います。

③ 学習

ボタン操作で学習を実行。不良サンプルが少なければNG画像生成で補います。

④ 検証(過検出・見逃しの確認)

テスト画像で結果を確認。過検出(良品を不良と誤る)と見逃し(不良を見落とす)のバランスを、しきい値スライダーで業務要件に合わせて調整します。

⑤ 本番反映

納得できたら本番ラインへ反映。新品種の追加も同じ流れで現場が自走できます。

― 4 / 比較

従来の検査機ティーチング vs ノーコードVLM学習

観点従来のティーチングノーコードVLM学習
品種追加の担い手画像処理の専門職現場担当者
必要スキルフィルタ設計・パラメータ調整良否の例示・結果確認
品種追加のスピード専門職の手待ちが発生現場の判断で進められる
不良サンプル不足収集できるまで待つNG画像生成で補える
得意な検査μm寸法・微細傷の高速検出多品種の外観・言語化できる良否

※ どちらが優れているという話ではなく、検査内容によって適材適所です。両者を組み合わせるのが最も実用的です。

― 5 / 向く/向かない

ノーコードVLM検査が向くケース・向かないケース

向くケース

向かないケース

実務では、ルールベースで確実に取れる欠陥はルールベースに任せ、品種切替や微妙な外観差の判定をVLMが補うハイブリッド構成が最も現実的です。

― 6 / Nsightのアプローチ

Nsightのアプローチ

Nsightは画像処理装置メーカー出身のエンジニアが在籍し、ルールベースの画像処理とVLMの双方を理解した上で、ブラウザ学習システムを設計しています。既存の画像処理システムを活かしつつ、VLMをソフトウェアレイヤーとして追加し、現場が品種追加・調整を自分で回せる状態をつくります。

立ち上げ支援 → 現場の自走へ

撮像設計やモデルの初期構築といった専門部分は支援し、研修で現場が学習UIを使いこなせるようにします。立ち上げから現場の内製運用まで、段階的に移行します。

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― 7 / 導入の注意点

ノーコード導入で押さえるべき注意点

― 8 / 関連記事

関連記事

多品種・VLM・ブラウザ学習

― 9 / よくある質問

よくある質問

ノーコードの検査UIで本当に現場が品種を追加できますか?

はい。VLMとオートアノテーション、NG画像生成を組み合わせると、現場担当者がブラウザ上で良品・不良サンプルを登録し、しきい値を調整して新品種を立ち上げられる範囲が広がります。従来のように専門職がパラメータを作り込む工程を大幅に減らせます。

なぜVLMだとノーコード化できるのですか?

従来の画像処理は品種ごとにフィルタやしきい値を職人的に作り込む必要がありました。VLMは外観の特徴を言語・画像から汎用的に捉えられるため、品種ごとの作り込みを減らせます。さらにオートアノテーションが正解付けを補助し、NG画像生成が不足しがちな不良サンプルを補うことで、現場が操作で完結できる範囲が広がります。

ノーコードVLM検査が向くケースと向かないケースは?

多品種・少量で外観の良否を言語化・例示できるケースに向きます。一方、μm単位の寸法測定や、ごく微細な傷をルールベースで高速・確実に検出すべきケースは、従来の画像処理の方が適します。両者を組み合わせるハイブリッド構成が現実的です。

既存のルールベース検査は捨てる必要がありますか?

いいえ。安定・高速に検出できる欠陥はルールベースのまま残し、品種切替や微妙な外観差の判定にVLMを上乗せするのが定石です。既存の画像処理システムにVLMをソフトウェアレイヤーとして追加する構成にも対応できます。

ブラウザ上で完結する学習UIの流れを教えてください。

一般的には、サンプル画像のアップロード→オートアノテーションによる正解付け補助→学習→検証(過検出・見逃しの確認)→本番反映、という流れをブラウザ画面上で回します。不良サンプルが少ない場合はNG画像生成で補います。

― REVIEWED BY
嶋野(元キーエンス画像処理部門 開発)
キーエンス画像処理部門での実務経験をもとに、製造業の外観検査・VLM・画像処理に関する技術監修を行っている。会社概要 →

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