SEAL DEFECT

包装のシール不良・かみ込みを検査したい|密封の良否をどう見るか

袋のシール部は「密封できているか」という一点に品質が集約されますが、透明で・しわが出て・異物が小さいという三重の難しさを抱えます。この記事では、なぜシール検査が難しいのかを撮像の側から分解し、何をどう確かめれば良否判定に近づけるのかを、限界も含めて整理します。

2026-07-29 / 最終更新 2026-07-29 / 監修:嶋野(元キーエンス画像処理事業部 開発エンジニア)/ 読了時間:約13分
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シール不良やかみ込みが厄介なのは、フィルムが透明でしわが多く、かみ込む異物が微小で、しかも「本当に密封できているか」は見た目だけでは分かりにくいためだと考えられます。まず現象を分けて捉えることが出発点になります。
02
外観で狙えるのは主にシール面のしわ・かみ込み・シワ由来のトンネル・封止幅の乱れで、これらは照明と角度の設計で写り方が大きく変わります。一方、袋内部の異物や封止強度そのものは外観だけでは追い切れず、X線や強度試験との役割分担が現実的だと考えます。
03
客観的な把握と現物検証が出発点です。実際の不良品・良品サンプルを持ち寄り、どの症状をどの手段で見るのかを切り分けたうえで、小さく試して判定の当たり外れを確かめていく進め方が、遠回りに見えて近道になりうると考えられます。
― 目次
  1. なぜシール不良は止めにくいのか
  2. 「シール不良」を分解する
  3. 撮像で見えるもの・見えないもの
  4. 撮像設計の考え方
  5. AIで判定するときの勘所
  6. 運用で崩れないために
  7. 落とし穴
  8. 進め方のロードマップ
― 01 / 背景と課題

密封の一点に品質が集まる——だから止めにくい

食品や医薬の袋物では、中身がどれだけ良くてもシールが甘ければ内容物は守れません。ピンホール・かみ込み・封止不足のいずれか一つでも通過すれば、賞味期限内の変質や液漏れ、無菌性の破綻といった重いクレームに直結します。つまりシール部は、製品の品質が最後の数ミリに凝縮される場所であり、ここでの見逃しは後工程では取り返しがつきにくい、という構造的な難しさがあります。

それでも現場では目視や抜き取りに頼りがちです。ラインが速く、袋は柔らかく形が定まらず、透明フィルムは光を通してしまう。人の目は連続監視に向かず、疲労や個人差でばらつきます。人手不足で検査員の確保自体が難しくなっている職場も増えており、「全数で・安定して・速く」見たいという要求と、目視の限界との間に大きなギャップが生まれていると考えられます。

この記事は、そのギャップを画像処理・AI外観検査で埋められるのか、埋めるとしたらどこまでで、どこからは別の手段に頼るべきかを、正直に切り分けることを目的にしています。売り込みの前に、まず「何が難しいのか」を共有させてください。

― 02 / 論点整理

ひとくちに「シール不良」と言っても中身は別物

対策を考える前に、現場で「シール不良」と呼ばれている現象を分解する必要があります。原因も見え方も異なるものを一括りにすると、撮像設計も判定基準もぶれてしまうためです。

シール面に現れる症状

かみ込み(シール部にフィルム片・粉体・製品カス・毛髪などを挟んだ状態)、しわ・シワ由来のトンネル(しわが封止部を横切って微細な通気路になる状態)、封止幅の不足やずれ、シールバーの当たりムラによる圧着不良、端の折れ込みなどが代表的です。これらは多くが「シール面の表面に痕跡が出る」ため、撮像で狙える余地があります。

表面には出にくい症状

一方、封止温度が足りずに一見きれいに閉じているのに強度が出ていない「疑似シール」、袋内部に紛れ込んだ異物、微小なピンホールなどは、外観からは判別しづらい領域です。見た目が正常でも密封性が担保されていないケースがあるため、外観検査だけで「密封OK」と言い切るのは危ういと考えられます。

この「表面に出る/出にくい」の線引きが、後の手段選定の土台になります。外観で拾える症状は撮像設計で攻め、出にくい症状はX線・CTによる内部欠陥検査や封止強度の試験と役割分担する——この整理をせずに一つの手段で全部を狙うと、どこかで無理が出やすいと考えます。

― 03 / アプローチ

撮像で見えるもの・見えないものを最初に分ける

透明フィルムのシール検査が難しい最大の理由は、フィルム自体が光を素通しし、しわや圧着痕が「照明の当て方次第でしか見えない」ことにあります。同じかみ込みでも、正面から均一に照らすとほぼ消え、斜めから当てると影として浮かぶ、ということが日常的に起きます。つまり「写せていない」だけで欠陥がない訳ではない、という点をまず疑う必要があります。

外観で狙いやすいもの

かみ込んだ異物の影、しわの凹凸、封止部の艶ムラ(圧着された部分としていない部分の反射差)、封止幅の輪郭、端部の折れは、光学条件を作り込めば画像上のコントラストとして現れやすい対象だと考えられます。特に「圧着された領域と未圧着領域の反射の違い」は、シール検査で頼りになる手掛かりになりうる情報です。

外観では追い切れないもの

袋の奥にある異物、色が中身と近い透明・半透明の異物、疑似シールの強度不足、極小ピンホールは、可視光の外観だけでは取りこぼしやすい領域です。異物混入の全体像はX線検査との併用で補い、封止強度は破壊・非破壊の強度試験で担保する、という多層の考え方が現実的だと考えます。外観検査は「万能の一枚岩」ではなく、複数の目の一つとして位置づけるのが誠実です。

― 04 / 設計の考え方

撮像設計こそが勝負どころ——照明・角度・搬送

シール検査の成否は、AIやアルゴリズム以前に「その欠陥が画像に写っているか」で八割方決まると言っても過言ではないと考えます。写っていないものは、どんなに賢いモデルでも判定できません。だからこそ、まず光学を作り込むことが要になります。

照明——しわとかみ込みを影で立たせる

透明フィルムの凹凸やかみ込みは、拡散した均一照明では消えやすく、ローアングル(低角度)照明や側射で影を作ると浮かびやすくなる傾向があります。艶ムラを見たい場合は、逆に正反射を使って圧着面の光り方の差を取りにいく設計が候補になります。狙う症状ごとに最適な光は変わるため、複数条件を試して比較することが欠かせません。基本の考え方は照明設計の基本で整理しています。

角度と背景——透明を透明のまま見ない工夫

透過照明(後ろから光を通す)でかみ込み異物を影絵として捉える、偏光を使って反射を制御する、暗視野でエッジだけを光らせる——いずれも「透明フィルムをそのまま撮ると情報が乏しい」問題への回答です。背景色やフィルム越しの中身との重なりが判定を乱すこともあり、搬送中の袋の姿勢・張り具合をどう安定させるかも同じくらい重要になります。

搬送とブレ——柔らかい袋という難物

袋は硬い部品と違い、たわみ・浮き・振動で形が一定しません。シール部だけでも面をなるべく平らに、カメラとの距離を一定に保つ治具や搬送の工夫が、画像の再現性を大きく左右します。ライン速度が速ければ露光時間との兼ね合いでブレも出ます。ハードとソフトを別々に考えず、撮像から判定までを一体で設計する発想が有効だと考えます。この一体設計はAI画像検査パッケージの考え方の中核でもあります。

― 05 / AIで判定するときの勘所

ルールベースとAIをどう使い分けるか

封止幅の測定やエッジの検出のように「見るべきものが明確で定量化できる」項目は、従来のルールベース画像処理が安定して速く、説明もしやすい領域です。一方、しわの形は無数にあり、かみ込む異物も千差万別で、「良品のバリエーションが広く、不良の見た目が一定しない」対象は、ルールで条件を書き切るのが難しくなります。ここがAI・VLMの出番になりうる部分だと考えます。

少ない不良サンプルという現実

シール不良は「めったに出ないから困っている」ことが多く、学習用の不良画像が集まりにくいのが実情です。そのため、良品の分布を学ぶ異常検知的な考え方や、言葉で判断基準を与えられるVLM的なアプローチが選択肢になります。ただし、どの方式も「現物・現場で本当に当たるか」は試さないと分かりません。数値の効果を先に約束するのではなく、手元のサンプルで判定の当たり外れを確かめる姿勢が前提だと考えます。

判定理由が見えることの価値

密封の良否は安全に関わるため、「なぜNGにしたのか」を後から説明できることが運用上とても重要になります。どこを見て判断したのかを提示できる仕組みは、基準の合意形成や過検出の調整、監査対応の面でも効いてくると考えられます。判定精度だけでなく、説明可能性を設計要件に入れておくことをおすすめします。

― 06 / 運用

導入後に効果を維持するための現実的な視点

検査は入れて終わりではなく、走らせ続けて初めて価値が出ます。フィルムのロット変更、印刷絵柄の違い、季節による結露や静電気での粉体付着、シールバーの摩耗など、現場の条件は静かに動き続けます。導入時に合わせた閾値が、数か月後には過検出や見逃しの側に寄っていく——これはよくある話だと考えます。

過検出と見逃しのバランス

密封の検査では、見逃し(NGを通す)を強く避けたい一方、過検出が多すぎるとラインが止まり、良品廃棄が増え、現場が検査を信用しなくなります。どちらにどれだけ振るかは品目のリスクで決まる経営・品質判断であり、技術側だけでは決められません。この線引きをあらかじめ関係者で握っておくことが、運用の安定に直結すると考えます。

基準の記録と再学習の段取り

NG判定の画像とその理由、実際に不良だったかの突き合わせを記録に残すと、後から基準を調整したり再学習したりする土台になります。誰が・いつ・どの根拠で判定条件を変えたかを追える状態にしておくことは、地味ですが効いてきます。運用の負荷とセットで検査の仕組みを設計することが、長く使える鍵になりうると考えます。

― 07 / 落とし穴

シール検査でつまずきやすいポイント

実際に取り組む際に、事前に知っておくと回避しやすい典型的な落とし穴を挙げます。多くは「外観検査に何を期待するか」の線引きの誤りから生まれると考えられます。

― 08 / ロードマップ

小さく試して見極める——遠回りに見える近道

最初から全ラインへの全数導入を目指すと、撮像の作り込み・基準合意・運用設計のどれか一つでつまずいたときに全体が止まります。まずは代表的な品目と、止めたい不良の症状を数種に絞り、実際の良品・不良品サンプルを持ち寄るところから始めるのが現実的だと考えます。

次に、その症状が「どの照明・角度で画像に写るか」を確かめます。ここで写らない症状は、外観ではなくX線や強度試験に回すと早い段階で切り分けられます。写る症状については、少数サンプルで判定の当たり外れを見て、過検出と見逃しの傾向をつかみます。この段階を丁寧にやる進め方はAI検査PoCの進め方にまとめています。

検証で見通しが立ってから、治具・搬送・運用の記録まで含めて本番設計に広げていく——この順番が、結局は手戻りを減らすと考えます。どの症状を外観で・どれを他手段でと切り分けるところは判断が要るので、迷ったら早めに相談するのも一手です。まずは現物を見ながら、何がどこまで見えるのかを一緒に確かめるところから始めるのが、確実な一歩になりうると考えられます。

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― FAQ

よくある質問

透明フィルムのシール不良は、外観検査だけで全部見つけられますか?

外観で狙いやすいのはかみ込み・しわ・封止幅の乱れなど表面に痕跡が出る症状で、照明と角度を作り込めば画像上のコントラストとして捉えられる余地があると考えられます。一方で袋内部の異物や封止強度不足、微小ピンホールは外観からは判別しにくく、X線や強度試験との役割分担が現実的です。外観だけで「密封OK」と言い切るのは避けるほうが安全だと考えます。

異物のかみ込みはX線と画像検査、どちらで見るべきですか?

シール面に挟まって表面に凹凸や影が出るかみ込みは可視光の画像で狙える余地があり、袋の奥にある異物や色の近い異物はX線が得意とする領域だと考えられます。どちらか一方ではなく、症状ごとに見える手段を割り当てる多層の考え方が有効です。まず実際の不良サンプルで、その異物がどの手段の画像に現れるかを確かめることをおすすめします。

不良サンプルがほとんど無いのですが、AIで検査できますか?

シール不良はめったに出ないため学習データが集まりにくく、良品の分布を学ぶ異常検知的な方式や、判断基準を言葉で与えられるアプローチが選択肢になりうると考えられます。ただしどの方式も現物・現場で本当に当たるかは試さないと分かりません。数値の効果を先に約束するのではなく、手元のサンプルで判定の当たり外れを確かめるところから始めるのが誠実だと考えます。

見た目はきれいなのに密封できていない不良(疑似シール)はどう見ますか?

封止温度や圧着が不足していると、外観は正常でも強度が出ていない疑似シールが起こりえます。これは見た目からの判別が難しく、外観検査だけでは追い切れない領域だと考えられます。封止強度の試験や、内部を捉える検査との組み合わせで担保する前提を崩さないことが重要です。外観検査は複数ある目の一つとして位置づけるのが現実的だと考えます。

食品・医薬の包装検査に法令上の決まりはありますか?

食品衛生や医薬品の品質・製造管理には所管の制度や基準が関わりますが、要求される検査内容や適用範囲は品目・区分によって異なります。具体的な数値要件や適用範囲は、厚生労働省など所管省庁の最新の公表資料や、必要に応じて専門家への確認をおすすめします。ここでは制度が存在するという一般的な事実の範囲にとどめ、個別の適否判断は現場の要件に即してご確認ください。

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嶋野(元キーエンス画像処理事業部 開発エンジニア)
キーエンス画像処理事業部での実務経験をもとに、産業用カメラ・照明・光学系・検査装置の開発に従事し、現在はNsightの技術コンテンツ監修を担当。プロフィール詳細 →

止めたいシール不良を、まず現物で確かめてみませんか

どの症状が外観で写り、どれをX線や強度試験に回すべきか——切り分けは現物を見るのが一番の近道です。実際の良品・不良品サンプルを前に、何がどこまで見えるのかを一緒に確かめるところから始められます。まずは小さく試して、判定の当たり外れを見極めましょう。

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