VISUAL INSPECTION / WELDING

溶接ビードをカメラで自動検査する

溶接ビードの外観をカメラとAIで自動検査する仕組みを解説します。ビードの幅・高さ・蛇行、アンダーカット・ピット・スパッタなど多様な外観欠陥を捉えるための撮像・照明設計、3D計測との使い分け、目視・熟練依存からの脱却の進め方を整理します。

2026-06-25 / 最終更新 2026-06-25 / 監修:嶋野(元キーエンス画像処理事業部 開発エンジニア)/ 読了時間:約12分
01
溶接ビードの外観検査は、ビードの形状(幅・高さ・蛇行)と表面欠陥(アンダーカット・ピット・スパッタ等)という性質の異なる項目を同時に見る必要があり、目視・熟練に依存しやすい領域。
02
光沢のある金属表面に立体的な凹凸があるため、2Dの明暗だけでは形状を捉えにくい。ビードの高さ・断面形状まで見たい場合は3D計測(レーザー変位など)の併用が有効な選択肢になる。
03
溶接は条件変動が大きく、同じ不良でも見え方がばらつく。良品学習型のAIで「正常なビードからの逸脱」を捉える発想が、多様な外観欠陥に対して実務的と考えられる。
― 目次
  1. 溶接ビード検査の難しさ
  2. 撮像と照明の設計
  3. 判定アルゴリズムの考え方
  4. 熟練依存からの脱却
  5. 運用での注意点
  6. つまずきやすい点
  7. 段階的な進め方
  8. 関連記事・関連ソリューション
  9. よくある質問
― 01 / 背景と課題

なぜ溶接ビードの外観検査は難しいのか

溶接部の品質は、製品の強度・安全性に直結します。そのため溶接ビード(溶接によって形成された盛り上がり部分)の外観検査は、製造現場で重要な工程です。しかし、この検査は自動化の難易度が高い領域として知られています。

見るべき項目が多岐にわたる

溶接ビードの外観検査では、複数の異なる観点を同時に評価します。ビードの幅・高さ・蛇行といった「形状」の良否に加え、アンダーカット(止端部のえぐれ)、ピット・ブローホール(穴・くぼみ)、スパッタ(飛散した溶融金属の付着)、オーバーラップ、割れなど、性質の異なる多様な表面欠陥を見分ける必要があります。一つのルールでは捉えきれません。

金属光沢+立体形状で撮像が難しい

溶接部は金属光沢を持ち、かつビードという立体的な凹凸があります。光沢面は照明が正反射してハレーションを起こしやすく、立体形状は2Dの明暗画像だけでは高さや断面が分かりません。撮像設計の難易度が高い対象です。

条件変動が大きく、見え方がばらつく

溶接は、母材・電流・速度・姿勢などの条件で仕上がりが変動します。同じ「アンダーカット」でも出方がばらつくため、決め打ちのルールでは対応しきれず、例外処理が膨らみがちです。

熟練検査員への依存

こうした難しさから、溶接ビードの良否判定は熟練検査員の経験に依存している現場が多くあります。技能の継承が難しく、人手不足や属人化のリスクを抱えやすい領域です。

― 02 / 撮像設計

金属光沢と立体形状をどう捉えるか

溶接ビード検査の成否は、光沢のある立体表面をいかに情報量豊かに撮像できるかにかかっています。

ハレーションを抑える照明

金属光沢面では、照明の正反射がハレーション(白飛び)を起こし、欠陥を覆い隠してしまいます。照明の角度・配置を工夫し、正反射を避けつつビードの凹凸を陰影として捉える設計が必要です。拡散照明や多方向からの照明、偏光の活用など、対象に応じた手法を検証します。

形状を捉えるための陰影

アンダーカットのえぐれやビードの盛り上がりは、光を斜めから当てて陰影を作ることで強調できます。複数方向から順番に照らし、それぞれの陰影を組み合わせて表面の凹凸を推定する手法(フォトメトリックステレオ等の考え方)も、立体的な欠陥の可視化に有効な場合があります。

2Dで足りなければ3D計測を併用

ビードの高さ・幅・断面形状を定量的に測りたい場合、2Dの明暗画像だけでは限界があります。レーザー変位計などによる3D計測を併用すると、ビード断面の形状を数値で捉えられます。「表面欠陥は2D画像で、形状寸法は3D計測で」という役割分担が有効な選択肢になります。何をどこまで測りたいかによって、2D/3D/併用を選びます。

現物での検証が前提

最適な撮像・照明は、母材・ビード形状・欠陥の種類によって変わります。現物のサンプルで撮像を試し、見たい欠陥が画像(または3Dデータ)に現れるかを確認したうえで判断する必要があると考えます。一般論だけで「検査できる」と断定することは避けるべきです。

― 03 / アルゴリズム

多様な欠陥をどう判定するか

撮像で欠陥や形状が捉えられたら、次は良否の判定です。溶接ビードは見るべき項目が多様なため、項目ごとに適した手法を組み合わせるのが実務的と考えられます。

形状の定量評価

ビードの幅・高さ・蛇行量などは、画像処理や3D計測によって数値化し、規格値との比較で良否を判定できます。基準が数値で定義できる項目は、判定根拠が明確になる利点があります。

表面欠陥の検出

ピット・スパッタ・アンダーカットといった表面欠陥は、形も出方も多様で、ルールで書ききるのが難しい項目です。ここでは、良品(正常なビード)の画像を学習し、そこから外れるものを異常として検出する良品学習型のアプローチが向きます。溶接は条件変動で見え方がばらつくため、不良の出方をすべて事前定義する方式より、正常からの逸脱を捉える発想のほうが対応しやすいと考えられます。

組み合わせ設計

「数値基準が明確な形状項目はルール/計測ベースで、多様な表面欠陥はAIで」という組み合わせが現実的です。一つの手法ですべてを賄おうとせず、項目の性質に応じて使い分けることが、安定した検査につながると考えます。

見逃しと過検出のバランス

溶接品質は安全に関わるため、見逃しを強く抑えたい一方、過検出が多いと人の確認負荷が増えます。要求品質と後工程の負荷から、許容するバランスを設計します。判定が難しいものは「要確認」として人が最終判断する設計が現実的です。外観検査自動化の進め方も参考になります。

― 04 / 導入

熟練依存から段階的に脱却する

熟練検査員の判断を自動検査に置き換えるには、その「判断基準」を可視化・数値化していく工程が必要です。

ステップ1:良品・不良品サンプルで撮像を作り込む

代表的な良品・不良品のサンプルを集め、照明・撮像(必要に応じて3D計測)の条件を作り込みます。見たい欠陥がデータに現れるかをまず確認します。

ステップ2:熟練判定とのすり合わせ

自動判定の結果と熟練検査員の判定を突き合わせ、「検査員が不良とするもの」を自動でも捉えられるよう調整します。検査員の暗黙知を判定基準に翻訳していく工程であり、ここに時間をかけることが品質を左右します。

ステップ3:自動を主軸に、人は確認へ

基準がすり合ったら自動判定を主軸にし、人は要確認品の最終判断に回ります。これにより熟練者の負担を軽減しつつ、判断の難しいものは人が担保する体制になります。技能継承の課題に対しても、判定基準がデータとして残ることが助けになります。

― 05 / 運用

運用で気をつけること

溶接ビード検査を安定運用するうえでの注意点です。

スパッタ・粉塵による撮像環境の悪化

溶接現場はスパッタや粉塵が多く、カメラレンズや照明が汚れやすい環境です。汚れは撮像品質を低下させるため、保護や定期清掃、撮像品質のモニタリングを運用に組み込む必要があります。

条件変動への追従

母材ロットや溶接条件が変われば、ビードの見え方も変わります。AIを使う場合は、新しいパターンを学習に取り込んで更新できる運用にしておくと、変化に追従しやすくなります。

判定根拠の記録

溶接は安全に関わるため、判定結果と根拠画像・データを記録しておくことが、トレーサビリティと品質保証の観点で重要です。後の検証や取引先への説明にも役立ちます。

― 06 / 落とし穴

導入でつまずきやすい点

― 07 / ロードマップ

まず現物サンプルで確かめる

溶接ビード検査は「自社のビードと欠陥が、画像(または3Dデータ)でどこまで捉えられるか」が出発点です。一般論で可否を断じるより、現物の良品・不良品サンプルで撮像・計測を試し、見たい項目がデータに現れるかを確認することをおすすめします。

Nsightでは、元キーエンス画像処理事業部で産業用カメラ・照明・光学系の開発に従事した監修者の知見をもとに、金属光沢面・立体形状という難しい対象に対する撮像設計を重視しています。2Dと3Dの使い分けを含め、「うちの溶接が検査できるか」は現物での検証を通じて一緒に確かめます。

― 08 / 関連

関連記事・関連ソリューション

― 09 / FAQ

よくある質問

溶接ビードの形状と表面欠陥を同時に検査できますか?

ビードの幅・高さ・蛇行といった形状項目と、ピット・スパッタ・アンダーカットといった表面欠陥は性質が異なるため、項目ごとに適した手法を組み合わせて検査するのが実務的と考えられます。形状は画像処理や3D計測で、多様な表面欠陥は良品学習型のAIで、という役割分担が有効な場合があります。

2Dカメラだけで十分ですか、3D計測が必要ですか?

表面欠陥の多くは2D画像で捉えられる場合がありますが、ビードの高さや断面形状を定量的に測りたい場合は3D計測(レーザー変位など)の併用が有効な選択肢になります。何をどこまで測りたいかによって2D・3D・併用を選びます。実際の必要性は現物での検証を通じて判断します。

金属光沢で白飛びしてしまわないか心配です。

金属光沢面の正反射によるハレーションは溶接検査の大きな課題です。照明の角度・配置の工夫、拡散照明や偏光の活用などで正反射を抑え、ビードの凹凸を陰影として捉える撮像設計を行います。最適な手法は対象により変わるため、現物で検証します。

熟練検査員の判断をどこまで再現できますか?

熟練検査員の判定と自動判定を突き合わせ、暗黙の判断基準を数値・学習データに翻訳していくことで、再現性を高めていきます。一律にどこまでと断定はできませんが、判断が難しいものは人が最終確認する体制とすることで、品質を担保しながら省人化を進められると考えます。

スパッタや粉塵の多い現場でも使えますか?

溶接現場は撮像環境が厳しいため、カメラ・照明の保護、定期清掃、撮像品質のモニタリングを運用に組み込む必要があります。これらを設計に織り込めば、厳しい環境でも安定運用を目指せると考えます。

― REVIEWED BY
嶋野(元キーエンス画像処理事業部 開発エンジニア)
キーエンス画像処理事業部での実務経験をもとに、産業用カメラ・照明・光学系・検査装置の開発に従事し、現在はNsightの技術コンテンツ監修を担当。プロフィール詳細 →

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