LOGISTICS / GATE MANAGEMENT

トラック入退場をカメラで自動記録する

倉庫・物流センターのゲートで、トラックのナンバープレートをカメラで自動認識し、入退場時刻と滞在時間を自動記録する仕組みを解説します。荷待ち時間の可視化、守衛業務の省人化、構内安全の観点から、必要なカメラ要件・OCR精度・運用設計までを整理します。

2026-06-25 / 最終更新 2026-06-25 / 監修:嶋野(元キーエンス画像処理事業部 開発エンジニア)/ 読了時間:約12分
01
トラックのナンバープレートをゲートのカメラで読み取れば、入退場時刻・滞在時間・車両IDを人手の記帳なしで自動記録できる。守衛の手書き台帳やバーゲートの停止待ちを置き換える発想。
02
鍵は「走行中・斜め・夜間・雨天でも読める」撮像設計。一般的なナンバー認識は静止前提のものが多く、ゲート通過のように動く車両を低い照度で捉えるには、シャッタースピード・照明・設置角度の専用設計が要る。
03
入退場ログが自動で残ると、荷待ち時間(構内滞在時間)の実測値が初めて取れる。2024年問題で論点になる「待機時間の削減」は、まずこの実測データがないと打ち手が決められない。記録の自動化は荷待ち可視化の土台になる。
― 目次
  1. なぜ入退場を自動記録するのか
  2. 求められる要件
  3. システム構成
  4. 精度をどう担保するか
  5. 運用設計
  6. つまずきやすい点
  7. 段階的な進め方
  8. 関連記事・関連ソリューション
  9. よくある質問
― 01 / 背景と課題

なぜトラックの入退場をカメラで自動記録するのか

倉庫や物流センターのゲートでは、入退場するトラックの管理を守衛や警備員が手作業で行っているケースが今も少なくありません。来場時刻を台帳に手書きし、車両番号と運送会社名を確認し、退場時にもう一度記帳する。この運用は、台数が増えるほど守衛の負担が重くなり、ピーク時間帯には記録の抜け・誤記が発生しやすくなります。

近年、この入退場記録を自動化したいというニーズが急速に高まっています。背景には大きく3つの事情があります。

1. 荷待ち時間(構内滞在時間)の実測ニーズ

いわゆる「物流の2024年問題」では、ドライバーの拘束時間短縮が大きな論点になっています。その中で繰り返し指摘されるのが「荷待ち時間」、つまりトラックが構内に到着してから荷役を終えて出るまでの待機時間です。一般的に、この荷待ち時間を削減することが拘束時間短縮の有効な手段の一つと考えられています。

ところが、荷待ち時間を削減しようとしても、多くの現場では「そもそも何分待っているのか」という実測データがありません。手書き台帳では到着時刻と退場時刻を正確に突き合わせることが難しく、集計にも手間がかかります。入退場をカメラで自動記録すれば、車両単位で「いつ来て、いつ出たか」が秒単位で残り、滞在時間の分布を初めて客観的に把握できるようになります。

2. 守衛・受付業務の省人化

人手不足は物流業界全体の課題であり、ゲートでの受付・記帳業務も例外ではありません。深夜・早朝の入退場まで含めて人を常駐させるのは負担が大きく、自動記録によって守衛が記帳から解放されれば、本来注力すべき安全確認や来場者対応に時間を割けるようになると考えられます。

3. 構内安全とトレーサビリティ

構内事故や接触トラブルが起きたとき、「どの車両が、何時に、どのゲートを通ったか」という記録は重要な手がかりになります。映像とナンバー記録が残っていれば、事後の確認や保険対応がスムーズになります。手書き台帳では、この粒度の記録を残すことは現実的ではありません。

― 02 / 要件整理

ゲートでのナンバー自動認識に求められる要件

「ナンバープレートを読む」という処理は、コンビニ駐車場や有料駐車場で既に広く使われています。しかし、物流ゲートでの入退場記録には、それらとは異なる固有の難しさがあります。要件を整理します。

走行中の車両を読み取れること

駐車場の入庫ゲートは、多くの場合バーが上がるまで車両が停止します。一方、物流ゲートでは「停止させずに通過させたい」というニーズが強い現場が多くあります。バーで停止させると通過に時間がかかり、ピーク時にゲート前の渋滞や構外への車列が発生するためです。停止させずに記録するには、走行中(一般的には徐行〜時速十数km程度)のナンバーを、ぶれずに捉える撮像設計が必要です。

夜間・早朝・雨天で読めること

物流は24時間動く現場が多く、入退場のピークが深夜・早朝に来ることも珍しくありません。照度が低い時間帯にナンバーを安定して読むには、補助照明やカメラ側のダイナミックレンジ設計が欠かせません。ヘッドライトの強い光と暗い背景が同居する逆光気味のシーンでも、プレート面の文字が白飛び・黒つぶれしない設計が求められます。

斜め・大型車のプレート位置に対応すること

大型トラックはナンバープレートの取り付け位置が乗用車と異なり、車種によってばらつきがあります。ゲートの幅やカメラの設置位置によっては、プレートを斜めから捉えることになります。斜め方向からの文字の歪みを補正して読める設計が必要です。

入場と退場を区別できること

同じ車両が入場と退場で2回通過します。両者を取り違えると滞在時間の計算が破綻します。通過方向の判定(カメラの設置とロジックで進行方向を判別する、または入場ゲートと退場ゲートを物理的に分ける)を設計に織り込む必要があります。

― 03 / アーキテクチャ

システム構成の考え方

ゲートでのナンバー自動記録システムは、一般的に次の要素で構成されます。

撮像部(カメラ+照明)

走行中の車両を止めずに撮るため、シャッタースピードを速く設定できる産業用カメラを使うのが基本です。シャッターを速くすると取り込める光量が減るため、夜間帯には補助照明(近赤外照明を用いる構成もあります)を組み合わせ、照度に依存しない撮像を狙います。設置角度は、プレートの歪みが小さく、かつ車両のライトが直接レンズに入りにくい位置を現地で調整して決めます。

ナンバー認識(OCR)部

撮像した画像からプレート領域を検出し、文字を読み取ります。日本のナンバープレートは「地域名・分類番号・ひらがな・一連指定番号」で構成され、これらを正しく分離して認識する必要があります。読取結果には信頼度スコアを付け、スコアが低い場合は「要確認」として別扱いにする設計が、誤記録を防ぐうえで有効です。

エッジ処理という選択肢

ゲートの映像をすべてクラウドに送って処理すると、通信量・遅延・通信断時の停止リスクが問題になります。ゲートのそばに小型のエッジAI端末(産業用PCやJetson系の組込み機器など)を置き、その場で認識まで完結させ、結果のテキストデータだけを上位システムに送る構成にすると、通信に依存せず安定して動かしやすくなります。映像そのものを外に出さないため、プライバシー・セキュリティの観点でも扱いやすくなります。

記録・連携部

認識結果(車両番号・通過時刻・入退場区分・信頼度スコア・参照用の静止画)をデータベースに記録します。既存の入退場管理システムや倉庫管理システム(WMS)、予約システムと連携できれば、「予約された車両が来たか」「予約外の車両か」の自動判定や、荷待ち時間の自動集計まで広げられます。

― 04 / 精度設計

読取精度をどう担保するか

自動記録システムで最も気にされるのが「ちゃんと読めるのか」という点です。読取精度は、撮像の質・認識アルゴリズム・運用設計の3つで決まります。一般論として、撮像段階で鮮明なプレート画像を安定して取れていれば、認識側の負担は大きく下がります。逆に、撮像がぶれていたり暗すぎたりすると、どれだけ認識アルゴリズムが優秀でも読めません。精度問題の多くは撮像設計で解決すると考えられます。

信頼度スコアと「要確認」の運用

すべての通過を100%自動で確定させようとすると、稀な読み間違いが記録を汚します。現実的な設計は、信頼度スコアに閾値を設け、閾値を超えたものは自動確定、下回ったものは「要確認」として静止画つきで残し、後から人がまとめてチェックする運用です。これにより、誤記録を抑えつつ、人の確認作業を最小限に抑えられると考えられます。

読めなかった場合のフォールバック

プレートが泥で汚れている、一部が隠れているなど、どうしても読めないケースは発生します。その場合でも「通過した事実」と静止画は必ず残す設計にしておけば、記録の抜けを防げます。番号は後から人が静止画を見て補完できます。

現地での検証が前提

読取精度は、カメラの設置位置・照明・通過速度・天候といった現地条件に強く依存します。カタログ上の数値だけで精度を断定することは避けるべきで、実際の精度は現地での試験運用を通じて確認していく必要があると考えます。Nsightでは、こうした撮像条件の作り込みを含めた検証を重視しています。

― 05 / 運用

運用設計のポイント

導入して終わりではなく、安定して使い続けるための運用設計が重要です。

カメラの汚れ・ずれへの対処

屋外設置のカメラは、雨・砂塵・虫などでレンズが汚れます。読取成功率が徐々に下がってきたら清掃のサインです。成功率を日次でモニタリングし、一定以上低下したら通知する仕組みを入れておくと、汚れによる読取不良を早期に発見できます。

記録データの活用設計

入退場ログを「記録するだけ」で終わらせず、活用まで設計すると価値が大きく変わります。たとえば、車両単位の構内滞在時間を集計してレポート化すれば、荷待ちが長い時間帯・取引先・荷種を特定でき、改善の打ち手につながります。構内の作業を可視化する取り組みと組み合わせると、ゲートから荷役までの一連の流れを通して把握できるようになります。

プライバシーへの配慮

ナンバープレートや車両映像は個人情報・事業者情報を含みうるため、保存期間・アクセス権限・利用目的を明確にした運用ルールが必要です。映像を外部に送らないエッジ処理構成は、この観点でも有利に働きます。

― 06 / 落とし穴

導入でつまずきやすい点

実際の導入で起きやすい問題を、あらかじめ知っておくと回避しやすくなります。

― 07 / ロードマップ

段階的な進め方

いきなり全ゲートを完全自動化するのではなく、段階を踏むことでリスクを抑えながら導入できると考えます。

ステップ1:1ゲートで撮像条件を作り込む

まず代表的な1ゲートにカメラと照明を設置し、実際の通過車両で読取精度を確認します。昼夜・天候の異なる条件でデータを取り、撮像パラメータを現地に合わせて調整します。

ステップ2:記録の自動化と人による確認の併用

自動記録を始めつつ、当面は守衛による確認も並行させます。「要確認」として残った通過を人がチェックし、読取の取りこぼしがないかを検証します。この期間に閾値や運用ルールを固めます。

ステップ3:滞在時間の可視化・他システム連携

記録が安定したら、滞在時間の自動集計やレポート化、予約システム・WMSとの連携へ広げます。ここまで来ると、荷待ち時間の実測に基づいた改善のサイクルを回せるようになります。

Nsightでは、こうした撮像条件の作り込みから運用設計までを、現場ごとの条件に合わせて検証しながら進めることを重視しています。「うちのゲートで読めるのか」という点は、実際の現地条件で確かめてみることをおすすめします。

― 08 / 関連

関連記事・関連ソリューション

― 09 / FAQ

よくある質問

走行中のトラックでもナンバーを読めますか?

停止させずに記録したいというニーズに対しては、シャッタースピードを速くした産業用カメラと補助照明を組み合わせ、走行中(徐行〜時速十数km程度)でもぶれずにプレートを捉える撮像設計を行います。実際に読めるかは通過速度・設置角度・照度などの現地条件に依存するため、現地での試験運用を通じて確認することをおすすめします。

夜間や雨の日でも記録できますか?

物流は24時間動く現場が多いため、夜間・早朝・雨天での読取は重要な要件です。補助照明(近赤外照明を用いる構成もあります)やカメラのダイナミックレンジ設計により、低照度や逆光の条件でもプレート面を捉える設計を行います。安定性は現地条件で確認が必要です。

既存のバーゲートや入退場管理システムと連携できますか?

認識結果はテキストデータとして出力できるため、既存の入退場管理システム・倉庫管理システム(WMS)・予約システムとの連携を設計できる場合が多いと考えられます。連携可否は既存システムの仕様によるため、個別にご相談ください。

読み間違いで記録が汚れないか心配です。

読取結果に信頼度スコアを付け、閾値を超えたものは自動確定、下回ったものは「要確認」として静止画つきで残す運用にすることで、誤記録を抑えつつ人の確認を最小限にできると考えられます。読めなかった場合も通過した事実と静止画は必ず残す設計にできます。

映像が外部に流出しないか不安です。

ゲート付近のエッジAI端末で認識まで完結させ、結果のテキストだけを上位システムに送る構成にすれば、映像そのものを外部に出さずに運用できます。プライバシー・セキュリティの観点で扱いやすい構成です。

― REVIEWED BY
嶋野(元キーエンス画像処理事業部 開発エンジニア)
キーエンス画像処理事業部での実務経験をもとに、産業用カメラ・照明・光学系・検査装置の開発に従事し、現在はNsightの技術コンテンツ監修を担当。プロフィール詳細 →

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