照明を白色から青にして、角度を変えて、リングをバーに替えても欠陥が写らない——その堂々巡りは、照明の種類の問題ではなく「欠陥をどう光に反応させるか」という撮像設計の問題であることが多いと考えられます。欠陥の物理から光の当て方を逆算し、カメラ・レンズと一体で詰める発想を整理します。
白色の照明を青に替えてみる。リング照明をバー照明に替えてみる。角度を浅くしたり、逆に真上から当てたり、明るさを上げ下げしたり——それでも狙った欠陥が安定して写らない。写ったと思っても、ワークを少しずらすと消えてしまう。多くの現場で、この「照明を変え続ける堂々巡り」に時間が溶けていくのを見てきました。
困っているのは、決して手を抜いているからではありません。むしろ真面目に一つずつ照明を試している方ほど、この沼にはまりやすいと考えられます。なぜなら、照明の「種類」を横並びに試すという発想そのものが、問題の立て方として上流を一段飛ばしているからです。
「この欠陥に一番良い照明はどれか」という問いは、一見まっとうに見えます。しかし実際には、同じ傷でも光の当て方次第で写ったり完全に消えたりします。つまり欠陥は「照明の種類」に反応しているのではなく、「光がどの方向から入って、どこへ反射・散乱・透過していくか」という光学現象に反応していると考えられます。カタログの照明名を総当たりしても、その物理が噛み合わなければ、いくつ試しても写らないのは当然とも言えます。
この記事では、照明単体の選び直しではなく、欠陥の物理から光の当て方を逆算し、カメラ・レンズを含めた撮像設計として詰めていく考え方を整理します。遠回りに見えて、これが「写らない」を抜け出す最短ルートになりうると考えます。
外観検査の画像は、大まかに「照明」「レンズ」「カメラ」「ワークの置き方」という要素の掛け算で決まります。このうち一つ、たとえば照明だけを変数として動かすと、他が固定されているぶん動ける範囲が狭く、たまたま噛み合わないと「何を試してもダメ」に見えてしまいます。実際には照明・レンズ・カメラ・配置は互いに強く干渉し合っていて、一体で設計しないと本来写るはずの欠陥も写らないことがあると考えられます。
もう一つの論点は、写り方の評価が主観に流れやすいことです。「なんとなく見える気がする」で条件を確定すると、日をまたいだり作業者が替わったりした途端に再現しません。欠陥部と正常部の明暗差(コントラスト)が数値としてどれだけ出ているか、そのばらつきがどの程度か、といった客観指標で見ないと、良し悪しの判断が揺れ続けます。
「照明を変えても写らない」という悩みは、突き詰めると「撮像という工程全体を設計対象として扱えていない」という状態の表れであることが多いと考えます。ここを撮像設計の問題として立て直すと、打ち手は一気に具体的になります。欠陥を写すための照明設計の基本を押さえたうえで、光学系全体の噛み合わせを見る視点が要になると考えられます。
撮像設計の出発点は、「その欠陥はどんな光学現象なのか」を言葉にすることだと考えます。傷・打痕・欠け・異物・汚れ・ムラ・クラック——名前は違っても、光の観点で見ると数種類の型に整理できます。ここを曖昧にしたまま照明を選ぶから、噛み合わないのだと考えられます。
たとえば表面の凹凸(打痕・浅い傷・エンボスの潰れ)は、面の傾きが局所的に変わることで光の反射方向がずれる現象です。ならば陰影が強く出る当て方が向きます。透明体の内部の気泡やクラックは、光が屈折・散乱する現象なので、後ろから光を通してその乱れを見るのが素直です。鏡面上のムラや色変化は、正反射を均一に返させたうえで差だけを浮かせたい。同じ「欠陥」でも、光に対する振る舞いがまるで違います。
この分類ができると、「凹凸だから低角度で陰影を出す」「内部欠陥だから透過」「鏡面だから同軸」「反射のギラつきが邪魔だから偏光」というように、当て方を物理から逆算できます。逆に言えば、この逆算をせずに照明を総当たりするのは、当たりくじの見えない福引きを引き続けているようなもので、時間がかかるうえ再現性も残らないと考えられます。
素材によっても光の返り方は大きく変わります。金属・樹脂・ゴム・フィルム・ガラスでは、同じ当て方でも見え方が別物になるため、材質別の照明設計の勘所を併せて押さえると、逆算の精度が上がると考えられます。
光の当て方には代表的な型があり、それぞれ得意な欠陥が異なります。ここでは万能な照明を探すのではなく、欠陥の型に対して当て方を割り当てる、という考え方で整理します。
ワークに対してほぼ真横から浅い角度で光を入れると、平らな面はカメラ側に光を返さず暗く沈み、傷や打痕の縁だけが光を跳ね返して明るく浮きます。浅い凹凸や刻印の潰れ、微細な傷を「陰影」として立てたいときに向くと考えられます。ただし角度が数度変わるだけで見え方が変わるため、照明とワークの相対位置を固定できるかが肝になります。
ワークの背後から光を当て、透過光やそのシルエットを見る方式です。透明フィルムやガラス、樹脂の内部気泡・クラック、あるいは外形の欠け・寸法など、光を遮る/乱す欠陥に強いと考えられます。表面の反射に惑わされないのが利点ですが、不透明なワークには使えず、内部欠陥に限られる点は前提として押さえておきたいところです。
レンズの光軸と同じ向きから光を落とし、鏡面のように正反射する面を均一に明るく照らす方式です。金属の研磨面やメッキ、ウェハのような面のムラ・汚れ・微小な段差を、ギラつきを抑えて均一な背景の上で見たいときに向くと考えられます。反面、拡散面には効きにくく、面が均一に反射する前提が崩れると効果が出にくいです。
照明とカメラの双方に偏光フィルターを入れ、向きを直交させると、表面の鏡面反射(テカリ)を選択的に弱められます。ラミネートやコーティング、濡れた面のギラつきに欠陥が埋もれてしまう場合に、反射を抑えて下の情報を浮かせる狙いで使えると考えられます。光量が落ちる、素材の複屈折で見え方が変わる、といった副作用もあるため、実物での確認が欠かせません。
当て方の方針が決まっても、カメラとレンズが噛み合わなければ欠陥は写りません。ここを分業で個別に選ぶと、せっかくの照明設計が活きないことが起きやすいと考えられます。
写したい最小の欠陥が、画像上で何画素に写るかを見積もらないと、そもそも判定以前に見えません。視野の広さとセンサーの画素数から1画素あたりの実寸を出し、狙う欠陥がその数倍以上の画素で写るかを確認する。ここが足りないと、照明をどれだけ詰めても解像しないため、まず数字で押さえておきたいところです。カメラ選定の考え方を土台に、視野と分解能を先に決めるのが順序として素直だと考えます。
ワークに高低差があれば、ピントの合う奥行き(被写界深度)を確保する必要があり、それは絞りやレンズ選びに直結します。絞ると被写界深度は稼げますが暗くなるので、照明の光量とトレードオフになります。また低角度照明を入れる物理的なスペースは、カメラとワークの距離(ワーキングディスタンス)に依存します。照明・レンズ・カメラは互いにこう干渉し合うため、一体で詰めるのが結局は近道だと考えられます。カメラ・レンズ・照明・現場ライティングを一体で詰める光学・ハード一体設計の観点が、ここで効いてくると考えます。
Nsightは、元キーエンス画像処理事業部で撮像設計に携わったエンジニアの現場知見を土台に、産業用カメラ・レンズ・照明を一体で詰めたうえで、VLM/AIによる判定を載せるという順序を大切にしています。撮像が土台、判定はその上、という順番を崩さないことが、安定した検査につながると考えられます。
堂々巡りを抜けるには、当てずっぽうの試行を、記録の残る検証に変えることだと考えます。以下は、遠回りに見えて確実な確かめ方の一例です。
まず、良品と、写したい欠陥の実物を複数集めます。理想は「見逃したくない最も軽微な欠陥」と「紛らわしい良品」を含めること。この境界のサンプルがないと、写る/写らないの判断基準が決まりません。写真や言葉での説明だけでは光学現象は再現できないため、現物が出発点になります。
低角度・透過・同軸・偏光と、当て方の型を一つずつ試し、その都度画像を保存します。目視で「見える気がする」で止めず、欠陥部と正常部の明暗差が数値としてどれだけ出ているか、ワークをずらしたときに再現するかまで見る。記録が残れば、後から比較でき、他の人にも判断を引き継げます。
安定して欠陥が写る撮像条件が定まって初めて、しきい値やAI・VLMによる判定を検討する段階に入れると考えます。撮像が不安定なまま判定側でカバーしようとすると、条件変動のたびに崩れて調整が終わりません。写す設計が土台、という順序を守ることが結局は早いと考えられます。検査そのものが成立するかを含めて見極めたい場合は、PoC・検査方式設計の相談で、小さく試してから広げる進め方もあります。
撮像設計でよくあるつまずきを挙げます。どれも「照明単体を疑う」だけでは見えてこない論点です。
最後に、今日から動ける順序を整理します。大がかりな投資の前に、確かめられることは意外と多いと考えます。
手元の欠陥が、凹凸なのか・内部なのか・鏡面上のムラなのか・反射に埋もれているのかを一度書き出してみる。これだけで、試すべき当て方が低角度・透過・同軸・偏光のどれかに絞れ、総当たりから抜け出せると考えられます。
境界サンプルを含む現物を使い、当て方ごとに撮って残す。明暗差とばらつき、姿勢変動への強さを見て、写る条件を客観的に把握します。この記録が、社内の合意形成にも、外部への相談にもそのまま使える資産になると考えます。
安定して写る撮像条件ができてから、AI・VLMを含む判定側を設計する。撮像設計とカメラ・レンズ・照明の一体最適、そのうえの判定という順序で積むことが、「照明を変えても写らない」を根本から抜ける道になりうると考えます。判断に迷う場面は、無理に一足飛びを狙わず、写す条件の見極めから小さく始めるのが誠実な進め方だと考えられます。
照明の種類を総当たりする前に、その欠陥が「光でどう変わるか」を分類できていない場合が多いと考えられます。凹凸なら陰影が出る低角度、内部欠陥なら透過、鏡面のムラなら同軸、反射に埋もれるなら偏光、と物理から当て方を逆算すると絞り込めます。また照明だけ動かしてカメラ・レンズの分解能が足りていない可能性もあります。まず現物で写る条件を客観的に確かめることが出発点になりうると考えます。
欠陥の型で変わり、万能な当て方はないと考えられます。目安として、浅い傷や打痕など凹凸は低角度、透明体の気泡やクラックなど内部は透過、金属研磨面など鏡面のムラは同軸、コーティングのテカリに埋もれる欠陥は偏光が向きやすいとされます。ただし素材や姿勢で見え方は変わるため、実物のサンプルで複数の当て方を試して比較することを前提にお考えいただくのが安全だと考えます。
照明・レンズ・カメラ・ワークの置き方は互いに干渉するため、照明単体で解決しないことが多いと考えられます。特に、写したい最小の欠陥が画像上で何画素に写るかという分解能が不足していると、どんな照明でも解像しません。視野と1画素あたりの実寸を先に見積もり、被写界深度や光量とのトレードオフも含めて一体で詰めるのが、結果的に近道になりうると考えます。
撮像が不安定なままだと、AI・VLMを含む判定側で完全にカバーするのは難しいと考えられます。欠陥が安定して写る撮像条件が土台にあって初めて、判定側が力を発揮しやすくなります。撮像が揺れていると条件変動のたびに崩れ、調整が終わらなくなりがちです。写す設計を固めてから判定を載せる、という順序を保つことが、結局は安定と省力につながると考えます。
まずは良品と、見逃したくない軽微な欠陥・紛らわしい良品を含む現物サンプルを集めることをおすすめします。そのうえで当て方を一つずつ試し、明暗差やばらつき、姿勢変動への強さを画像として記録すると、社内でも外部相談でもそのまま使える資産になります。検査そのものが成立するか不安な場合は、小さく試して見極めるPoCから始める進め方もありうると考えます。
照明を変え続けても写らないのは、欠陥の物理と光学系の噛み合わせが原因のことが多いと考えられます。まずは現物の欠陥サンプルで、写る条件を客観的に確かめるところから。撮像設計とカメラ・レンズ・照明の一体最適について、現場の手触りでご一緒に整理します。
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