物流AI-OCR / ロット管理・トレーサビリティ

ロット番号トレーサビリティとは?
AI OCRで自動化する品質管理

ロット番号管理の目的と法的義務、手書き記録・Excel管理の限界、AI OCRによるロット番号自動読み取りの仕組み、WMS連携による全数トレース、食品・医薬品・化粧品での実装方法を元キーエンス画像処理エンジニアが解説します。

2026-06-28 / 最終更新 2026-06-28 / 監修:嶋野(元キーエンス画像処理事業部)/ 読了時間:約10分
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ロット番号トレーサビリティとは、製造ロットごとに原材料・加工履歴・出荷先を記録し、品質問題発生時に迅速に追跡・回収できる仕組み。食品・医薬品では法的義務。
02
従来の手書き台帳・Excel管理では記録漏れ・転記ミス・検索遅延が発生。AI OCRで入荷・出荷時にロット番号を自動読み取りし、WMS・ERPへリアルタイム記録することで全数トレースを実現。
03
VLM OCRは"LOT""製造日"などの表記揺れを自動認識。インクジェット印字・ドットプリント・感熱印字など多様な印字方式に対応し、書式変更時の再設定が不要。
― 目次
  1. ロット番号トレーサビリティとは何か――目的と法的義務
  2. 手書き台帳・Excel管理の限界
  3. AI OCRによるロット番号自動読み取りの仕組み
  4. WMS連携による全数トレース
  5. 食品・医薬品・化粧品での実装方法
  6. 導入ステップと注意点
  7. 関連記事
  8. よくある質問
― 01 / 定義と法的義務

ロット番号トレーサビリティとは何か――目的と法的義務

ロット番号トレーサビリティとは、製造ロットごとに原材料の入荷・加工工程・出荷先を記録し、品質問題発生時に迅速に追跡・回収できる仕組みを指します。食品・医薬品・化粧品など、消費者の健康に直結する製品では、万一の事故や品質問題が発生した際に、「いつ・どこで・何を使って製造したか」「どこに出荷したか」を速やかに特定し、影響範囲を最小限に抑える必要があります。

ロット番号の役割

ロット番号は、同一条件で製造された製品群を識別するための記号です。通常、製造日・製造ライン・原材料ロットなどの情報が組み合わされて構成されます。例えば、食品工場で賞味期限印字の横に「LOT 240601A」と記載されている場合、これは2024年6月1日にAラインで製造されたロットであることを示します。

法的義務

日本では、業種ごとに以下の法律でロット管理・記録保持が義務付けられています。

記録方法に法的な指定はありませんが、「速やかに追跡できる仕組み」の構築が求められます。紙の台帳やExcelでも法的には可能ですが、検索性・正確性・速度の観点から、デジタルシステムへの移行が事実上の標準となっています。

トレーサビリティが機能しないとどうなるか

2021年に発生した某食品メーカーの異物混入事故では、ロット管理が不十分だったため、影響範囲の特定に数週間を要し、全国規模の自主回収に発展しました。回収コストは数億円規模に上り、ブランドイメージの毀損も深刻でした。適切なトレーサビリティシステムがあれば、影響ロットを数時間以内に特定し、回収範囲を最小限に抑えられた可能性があります。

― 02 / 従来方式の限界

手書き台帳・Excel管理の限界

多くの中小規模の倉庫・工場では、現在もロット番号管理を手書き台帳やExcelで行っています。法的には有効ですが、実運用では以下の構造的な問題が発生します。

(1)記録漏れ・転記ミス

入荷時・出荷時にラベルのロット番号を目視確認し、台帳やExcelに手入力する作業は、人的ミスが避けられません。特に繁忙期や夜間シフトでは、記録漏れや数字の読み間違いが発生しやすくなります。

(2)検索に時間がかかる

品質問題が発生した際、「このロット番号の製品をいつ・誰に出荷したか」を調べるために、紙の台帳を何冊もめくったり、複数のExcelファイルを開いて検索したりする必要があります。緊急時の対応スピードが遅れ、被害拡大のリスクが高まります。

(3)リアルタイム性がない

手書き台帳は記録のタイムラグが大きく、「今この瞬間、どのロットがどこにあるか」をリアルタイムに把握できません。在庫状況と記録のズレが常態化し、先入先出(FIFO)管理が形骸化します。

(4)複数拠点での統合が困難

複数の倉庫・工場でロット管理を行っている場合、各拠点のExcelファイルを集約する作業が発生します。ファイル形式のバラつき、バージョン管理の混乱、重複入力などが頻発し、全社レベルのトレーサビリティ構築が事実上不可能になります。

これらの問題を解決するには、ロット番号を自動読み取りし、WMS・ERPへリアルタイムに記録する仕組みが必要です。AI OCRはその中核技術として機能します。

― 03 / AI OCRの仕組み

AI OCRによるロット番号自動読み取りの仕組み

AI OCRを使ったロット番号管理システムは、以下の流れで動作します。

(1)カメラでラベルを撮影

入荷検品時・出荷検品時に、段ボールや製品ラベルをカメラで撮影します。ハンディカメラ・固定カメラ・タブレットカメラなど、現場のレイアウトに合わせた構成を選択できます。

(2)AI OCRで文字を認識

撮影画像からAI OCRがロット番号・製造日・賞味期限などの文字情報を自動抽出します。従来のOCRでは「LOT」「製造日」「MFD」など、ラベルごとに異なる表記を事前定義する必要がありましたが、VLM OCR(Vision Language Model OCR)を使えば、自然言語の指示で読み取り項目を指定できます。

例:「この画像からロット番号と賞味期限を読み取ってください」という指示だけで、ラベル書式が変わっても自動認識します。

(3)WMS・ERPへ自動記録

読み取ったロット番号は、WMS(倉庫管理システム)またはERP(基幹システム)へAPI連携・CSV出力・DB直接更新などの方法でリアルタイムに記録されます。入荷時には「どのロットが・いつ・どこから入荷したか」、出荷時には「どのロットを・いつ・誰に出荷したか」が自動的にデータベースに蓄積されます。

(4)検索・追跡

品質問題が発生した際、WMS・ERPの検索画面でロット番号を入力すれば、数秒で該当ロットの入荷元・在庫場所・出荷先が一覧表示されます。紙の台帳やExcelを探し回る必要がなく、緊急時の対応スピードが劇的に向上します。

AI OCRの技術的優位性

印字方式従来OCRの対応AI OCR(VLM)の対応
インクジェット印字△ 設定調整が必要○ 自動認識
ドットプリント△ かすれに弱い○ 文脈推論で補完
感熱印字× 経年劣化で読めない△ 部分的に読めるケースあり
レーザー刻印○ 読める○ 読める
手書き× 認識不可△ 一部対応(筆跡次第)

物流OCRの技術進化についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

― 04 / WMS連携

WMS連携による全数トレース

AI OCRで読み取ったロット番号をWMS(倉庫管理システム)と連携することで、入荷から出荷までの全工程を自動記録し、リアルタイムトレーサビリティを実現できます。

入荷時の記録

トラックから荷下ろしされたケースのラベルをカメラで撮影し、ロット番号・製造日・賞味期限を自動読み取り。WMSの入荷予定データと照合し、一致すれば自動受入、不一致があればアラート発報します。入荷時刻・入荷元・ロケーションが自動記録されるため、手書き台帳への転記作業が不要になります。

保管中の先入先出(FIFO)管理

WMSにロット番号と賞味期限が記録されていれば、出荷指示時に「賞味期限の古い順」に自動ピッキング指示を生成できます。従来のExcel管理では、先入先出を徹底するために作業員が目視で賞味期限を確認する必要がありましたが、システムが自動判定するため、期限切れ在庫の発生リスクが低減します。

出荷時の記録

出荷検品時にもロット番号を読み取り、WMSへ記録します。「どのロットを・いつ・誰に出荷したか」が自動的にデータベースに蓄積されるため、万一の品質問題発生時に、出荷先リストを数秒で抽出できます。

既存WMSとの連携方式

AI OCRシステムは、既存のWMS・ERPと以下の方式で連携できます。

入荷検品のWMS連携についてはこちら物流OCR × WMSパッケージについてはこちらをご参照ください。

― 05 / 業種別実装

食品・医薬品・化粧品での実装方法

ロット番号トレーサビリティの要件は業種ごとに異なります。ここでは、代表的な3業種での実装パターンを紹介します。

(1)食品業界

特徴:賞味期限管理が必須。先入先出(FIFO)の徹底が求められる。

読み取り対象:ロット番号・製造日・賞味期限・原産国表示。

実装ポイント:入荷時にロット番号と賞味期限を読み取り、WMSへ登録。出荷指示時に賞味期限の古い順に自動ピッキング。冷蔵・冷凍倉庫では結露・霜によるラベル劣化に注意が必要で、耐環境性のあるカメラと照明を選定します。

(2)医薬品・医療機器業界

特徴:薬機法で厳格なロット管理が義務付けられている。記録の改ざん防止が重要。

読み取り対象:ロット番号・製造番号・有効期限。

実装ポイント:読み取り結果をブロックチェーン等の改ざん防止技術で記録するケースもあります。ロット番号の誤読は重大なリスクとなるため、読み取り精度のPoC検証を必須としています。バーコードとOCRのダブルチェック構成も有効です。

(3)化粧品業界

特徴:多品種小ロット。パッケージデザインが頻繁に変更される。

読み取り対象:ロット番号・製造年月・製造所記号。

実装ポイント:パッケージ変更のたびにOCR設定を変更するのは運用負荷が高いため、VLM OCRの導入が有効です。「ロット番号を読み取る」という指示だけで、書式が変わっても自動認識します。

― 06 / 導入ステップ

導入ステップと注意点

AI OCRによるロット番号トレーサビリティシステムの導入は、以下のステップで進めます。

ステップ1:現状分析とヒアリング(1週間)

現在のロット管理フロー・記録方式・WMS構成をヒアリングし、読み取り対象のラベル画像サンプルを収集します。この段階で、ロット番号の印字方式・書式の多様性・劣化状況を確認します。

ステップ2:PoC(Proof of Concept)検証(2〜4週間)

実際のラベル画像を使って読み取り精度を検証します。目標精度(通常98%以上)を設定し、達成できない場合はカメラ・照明・前処理方式を調整します。WMS連携のプロトタイプも作成し、データフローを確認します。

ステップ3:本番導入(1〜2か月)

PoC結果をもとに本番システムを構築します。WMS連携・エラーハンドリング・オペレーター画面を実装し、現場トレーニングを実施します。

ステップ4:運用開始と精度モニタリング

運用開始後、誤読率・読み取り失敗率を継続的にモニタリングします。ラベル書式の変更や印字品質の変動があった場合、システム側で自動調整できる範囲を超えた場合は、再調整を実施します。

導入時の注意点

物流OCR × WMSパッケージの詳細はこちらをご参照ください。

― 関連記事

関連記事

― よくある質問

よくある質問

ロット番号管理は法的に義務ですか?

食品業界では食品衛生法に基づく記録保持義務があり、医薬品・医療機器は薬機法でロット管理が義務付けられています。化粧品も同様に製造販売後の安全管理のためロット記録が求められます。記録方法の指定はありませんが、速やかに追跡できる仕組みの構築が必要です。

AI OCRはどんなロット番号表記に対応できますか?

インクジェット印字・レーザー刻印・ドットプリント・感熱印字など、多様な印字方式に対応できます。VLM OCRを使用すれば、"LOT""製造日"などのラベル表記の揺れも自動認識し、書式ごとの設定変更が不要です。

ロット番号の読み取り精度はどの程度ですか?

適切な照明・カメラ・前処理を組み合わせた場合、印字ロット番号で98%以上の認識精度が期待できます。かすれや汚れが多い場合は精度が下がるため、PoCで実画像による検証を推奨しています。

既存のWMS・ERPと連携できますか?

API連携・CSV出力・DB直接更新・ファイル連携など、既存システムの仕様に合わせた連携方式を選択できます。レガシーシステムとの接続実績もあり、WMS側の改修を最小限に抑える中継サーバー方式を標準としています。

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