ガラスや窯業製品の割れ・気泡・異物は、見る角度と光の当て方次第で「見える」瞬間と「消える」瞬間が入れ替わります。なぜ目視では安定して見つけられないのか。その難所を照明と撮像の視点から分解し、検査体制の設計として何から確かめるべきかを考えます。
「気泡や小さな割れを、目視では見つけられる日と見つけられない日がある」「別の人が検品すると結果が変わる」——ガラスや陶磁器、窯業製品の検査現場で、こうした悩みは珍しくありません。ラインの担当者が集中力を欠いているわけでも、教育が足りないわけでもない場合が多く、原因はもっと上流、つまり「その欠陥がそもそも安定して見える照明・角度になっていない」ところにあると考えられます。
透明・半透明の対象は、金属加工品や不透明な樹脂成形品とは検査の難しさの質が異なります。不透明体なら「表面に何があるか」を光を反射させて見ればよいのに対し、ガラスは光が中を通り抜けてしまうため、欠陥のある場所と背景が同じ明るさに見えてしまうことが起こります。人の目は差(コントラスト)で物を見ているので、コントラストが立たない欠陥は、たとえ視界に入っていても「見えない」ことになります。
背景には、品質保証への要求が年々厳しくなる一方で、熟練検査員の高齢化と採用難が同時に進んでいるという構造があります。抜取検査では流出リスクが残り、かといって全数を目視で回すには人が足りない——この板挟みの中で「自動化・AI化できないか」という相談が増えています。ただし透明体の検査は、対象が確実に写る撮像レイアウトが整って初めて自動化の土俵に乗るという性質があり、装置やAIを先に決めるより、まず「どう照らせば欠陥が見えるのか」から考えることが遠回りに見えて近道だと考えられます。
「ガラスの検査」とひとくくりにされがちですが、実際には欠陥の種類ごとに、光をどう扱えば見えるかが根本的に異なります。ここを混ぜて考えると、ある欠陥は写るのに別の欠陥は消える、という事態になりがちです。まず欠陥種を光との関係で分解してみます。
割れやクラックは、その面で光が屈折・散乱するため、背後から光を通す透過照明では周囲より暗い線・影として浮かびやすい傾向があります。逆に正面から均一に照らすと、クラック面がほぼ透明なため背景に溶け込んで見えにくくなることがあります。ヘアクラックのように幅が極めて細いものは、光を斜めから当てて散乱光を拾う配置が有効な場合もあり、一枚の画像ですべてのクラックを捉えるのは難しいと考えられます。
ガラス内部の気泡は、周囲のガラスと屈折率が違うため、光がその境界で曲げられます。結果として透過照明では、気泡の縁がリング状の明暗として現れることが多く、中心が明るく縁が暗い、あるいはその逆の特徴的な見え方をします。金属片などの内部異物は光を通さないため、透過では明確な暗点になりやすい一方、透明な異物(別のガラス片や結晶)は気泡と紛らわしく、判別には見え方の癖を捉える必要が出てきます。foreign product detection inspection の考え方も、背景と欠陥のコントラストをどう作るかという点で共通します。
陶磁器や窯業製品の釉薬ムラ、ピンホール、焼きムラ、表面付着異物は、内部欠陥とは逆に「表面でどう光が反射・拡散するか」で見える欠陥です。これらは透過ではなく反射・拡散照明の領域で、光沢面か艶消し面かによっても最適な照らし方が変わります。同じ製品に内部欠陥と表面欠陥が混在する場合、両方を一台のカメラ・一つの照明で見ようとすると、どちらかが必ず犠牲になりやすいという点が論点になります。
欠陥種を分解すると、検査の設計は「透過で見るべき欠陥」と「反射で見るべき欠陥」を仕分け、それぞれに撮像条件を用意する、という発想に自然に行き着きます。すべてを一撃で見ようとせず、欠陥群ごとに照明・カメラ・角度を最適化して複数回撮る、あるいは複数の撮像ステーションを設けるという考え方です。
対象の背後から均一な面光源で照らす透過照明は、内部の気泡・異物・クラックを浮かび上がらせる基本手段です。ポイントは背景光の均一性で、ムラのある背景は欠陥と紛らわしい偽の明暗を生みます。また、拡散透過(乳白の面光源)か平行光に近い照明かで、気泡の縁の立ち方が変わります。平行光寄りにすると微細な屈折差が強調され、細かい欠陥のコントラストが上がる一方、対象表面の汚れや水滴まで拾いやすくなる、というトレードオフがあると考えられます。
表面の凹凸・付着物・釉薬ムラには、光を斜めから当てて欠陥部の散乱光や影を強調する斜光(ローアングル)照明が効くことがあります。曲面や光沢面では、正反射が強く出る角度を避けつつ欠陥だけを浮かせる照明角度の追い込みが必要で、ここは対象の形状ごとに現物で詰めるほかありません。透明体・曲面の反射制御は難所で、透明体の外観検査で扱う樹脂の気泡・異物検査とも共通する設計課題が多くあります。
検査自動化の成否は、AIやアルゴリズムより前に「欠陥が背景から十分なコントラストで写った画像を、毎回安定して取れるか」でおおよそ決まると考えられます。照明・レンズ・カメラ・対象の位置関係(撮像レイアウト)を、欠陥を主役にして設計する——ここが最も地味で、最も効く工程です。
検出したい最小の気泡やクラック幅を、画像上で何画素に写すかを先に決めます。経験的には、確実に判定させたい欠陥は数画素以上で捉えたいことが多く、そこから必要な解像度・レンズ・ワーキングディスタンスが逆算されます。視野を広く取りすぎると微細欠陥が1画素未満に埋もれ、AIでも人でも検出不能になります。この分解能設計を飛ばして「後からAIで何とかする」ことはできないという点は、正直にお伝えすべき限界です。
瓶やレンズ状の製品は曲面ゆえに光の通り道が場所ごとに変わり、中心と縁で明るさや歪みが変わります。厚みのあるガラスでは、手前面・奥面・内部で焦点が合う位置が異なり、内部気泡だけを狙って写すのに被写界深度の設計が要ります。さらに透明体は多重反射で「ゴースト」的な偽像が出ることもあり、これを欠陥と誤らないための照明配置が必要です。こうした撮像側の難所を含めて、対象が確実に写るカメラ・照明・レンズ設計を前提に組み立てることが現実的だと考えます。
撮像条件が整い、欠陥が画像上にコントラストを持って写るようになって初めて、AI・VLMによる判定が力を発揮しうると考えられます。逆に言えば、写っていない欠陥はどんなに高性能なモデルでも学習も判定もできません。「AIなら微細な欠陥も見つけてくれる」という期待は、撮像がその欠陥を写している範囲でのみ成り立つ、という前提を共有しておくことが重要です。
気泡の面積・個数、暗点の輝度差といった定量的に切れる欠陥は、しきい値や画像処理で安定して判定できる場合があります。一方、「これは許容できるムラか、不良のムラか」といった、言葉での基準はあるが数値化しにくい判断には、VLM(視覚言語モデル)のように文脈を含めて評価できる手法が向く場面があります。すべてをAIに寄せるのではなく、確実に切れる欠陥は画像処理で、判断の揺れる欠陥はAIで、と役割を分けると運用が安定しやすいと考えられます。
窯業製品は、色ムラや微細な気泡が良品にも一定範囲で存在し、良品自体のばらつきが大きいことが多い対象です。加えて重大欠陥ほど発生頻度が低く、学習用の不良サンプルが集まりにくいという現実があります。このため「不良を学ぶ」だけでなく「良品の範囲を捉えて逸脱を見る」アプローチや、限られた実欠陥を最大限活かす設計が現場では効くことがあり、どちらが向くかは対象と欠陥次第と考えられます。
デモや初回テストでは欠陥がきれいに写ったのに、量産に乗せたら見え方が安定しない——これは透明体検査で起こりがちな躓きです。原因は対象そのものより、環境の揺らぎにあることが多いと考えられます。外光の差し込み、照明の経時劣化、対象の位置・向きのばらつき、表面の水滴や指紋、ガラスのロット差による地色の違いなどが、コントラストを日々変動させます。
対策として、外乱光を遮蔽して照明環境を固定する、対象の位置決め治具で撮像姿勢を揃える、照明光量をモニタして劣化を検知する、といった「写り方を毎回同じにする」工夫が土台になります。派手さはありませんが、この地固めが検査の再現性を支えます。どの揺らぎが自社の対象で効くかは事前には読みきれないため、小さく試して確かめるPoC・検査方式設計を通じて、量産条件に近い環境で写り方の安定性まで見ておくことが有効だと考えます。
最後に、ガラス・窯業製品の検査で見落とされがちな注意点を挙げます。どれも「やってみて初めて分かった」となりやすい点で、先に知っておくと設計判断が変わりうるものです。
透明・半透明体の検査は、机上の仕様検討だけでは可否が読みきれない領域です。だからこそ、まずは実際の良品と、できれば不良品(または限度見本)を持ち寄り、透過・反射それぞれで「その欠陥がどう写るか」を確かめるところから始めるのが現実的だと考えます。写ることが確認できれば、そこにAIや画像処理を重ねる筋道が見えてきます。写らなければ、照明・レンズ・角度を変えて写るまで詰める——この撮像の作り込みこそが、透明体検査の本丸です。
Nsightは、元キーエンス画像処理事業部で撮像・照明を突き詰めてきた現場知見に、VLM・Jetsonエッジ・産業用カメラ・現場ライティングを組み合わせて、この「欠陥が確実に写る条件づくり」から検査体制の設計までを一緒に考えます。まずは自社の対象で「見えるのか・どう見えるのか」を客観的に把握することを、最初の一歩としておすすめします。
見え方の物理が異なるため、一つの照明で両方を安定して捉えるのは難しい場合が多いと考えられます。気泡は屈折による縁の明暗、割れは面での散乱による暗線として現れやすく、透過照明の種類(拡散か平行光寄りか)でも強調される欠陥が変わります。欠陥種ごとに撮像条件を分けて設計する前提で、まず現物での写り方を確かめることをおすすめします。
内部の気泡・異物・クラックは背後から光を通す透過照明で、表面の釉薬ムラ・付着異物・ピンホールは斜光を含む反射照明で見えやすい傾向があると考えられます。内部欠陥と表面欠陥が混在する製品では、片方の照明で両方を賄おうとするとどちらかが写りにくくなりやすいため、撮像を分ける設計が現実的な場合が多いです。対象ごとに現物で最適角度を詰める必要があります。
AIが判定できるのは画像に写っている範囲に限られます。撮像・照明で欠陥が背景からコントラストを持って写っていることが前提で、写っていない欠陥は学習も判定もできません。まずレンズ・解像度・照明で最小欠陥が十分な画素数で写る条件を作り、その上でAIや画像処理を重ねる順序が現実的だと考えます。AIは万能ではなく、撮像設計の上に成り立つ道具と捉えると期待値のズレを防げます。
外光の差し込み、照明の経時劣化、対象の位置・向きのばらつき、水滴や指紋、ガラスのロット差による地色の違いなどが、コントラストを日々変動させることが原因と考えられます。外乱光の遮蔽、位置決め治具、照明光量のモニタといった「写り方を毎回同じにする」地固めが土台になります。量産条件に近い環境で写り方の安定性まで検証しておくことが有効です。
実際の良品と、可能であれば不良品または限度見本を用意し、透過・反射それぞれで欠陥がどう写るかを確かめるところから始めるのが現実的だと考えます。写ることが確認できれば判定手法を重ねる筋道が見え、写らなければ照明・レンズ・角度を詰めます。小さく検証してから方式を決めるPoCを通じ、量産での再現性まで見ておくと後戻りを減らせると考えられます。
割れ・気泡・異物・釉薬ムラは、照明と撮像の設計次第で見え方が一変します。まずは現物の良品・不良品を持ち寄り、透過・反射でどう写るかを一緒に確かめるところから始めませんか。撮像の作り込みから検査体制の設計まで、現場目線でご相談に応じます。
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