AI GOVERNANCE

生成AIに入れてよい情報・いけない情報の線引き

生成AIへの入力可否を、公開情報・社内限定・顧客情報・個人情報・営業秘密の区分ごとに整理する実務フレームを解説します。匿名化やマスキングで使える範囲を広げる考え方、法人プランでも残る留意点、違反を責めない教育設計まで、情シス・DX推進担当が明日から使える形でまとめました。

2026-06-25 / 最終更新 2026-06-25 / 監修:嶋野(元キーエンス画像処理事業部 開発エンジニア)/ 読了時間:約14分
01
「生成AIに何を入れてよいか」は、ツールの安全性の問題ではなく自社の情報区分の問題として捉え直すと整理しやすくなります。公開情報・社内限定・顧客情報・個人情報・営業秘密という区分ごとに入力可否の初期値を決め、迷ったときの判断を現場任せにしない枠組みを先に用意することが実務の出発点になると考えます。
02
匿名化・マスキング・要約という前処理を挟むと、そのままでは入れられない情報も「加工後なら使える」範囲に移せる場合があります。ただし加工が不十分だと再識別されるため、どこまで削れば安全と見なすかの基準づくりと、契約や法令に関わる部分の法務確認が前提になると考えられます。
03
ルールは配って終わりではなく、公認ツールの提供・具体例の共有・違反を責めない相談導線とセットで初めて機能します。禁止一辺倒は隠れた利用(シャドーAI)を生むため、統制と活用支援を同じ設計の中に置くことが、結果的に情報を守る近道になると考えます。
― 目次
  1. なぜ線引きが難しいか
  2. 5つの情報区分
  3. 匿名化とマスキング
  4. 法人プランでも残る留意点
  5. 違反を責めない教育
  6. ルールを回す仕組み
  7. 関連記事・関連ソリューション
  8. よくある質問
― 01 / 背景と課題

なぜ「入れてよい情報」の線引きはこれほど難しいのか

生成AIの業務利用が広がるなかで、情報システムやDX推進の担当者に最も多く寄せられる相談のひとつが「結局、何を入れてよくて、何を入れてはいけないのか」という問いです。ツールの選定や契約は進んだものの、いざ全社に開放しようとすると、この一点で足が止まる組織は少なくないと考えられます。なぜこれほど難しいのでしょうか。

「安全か危険か」の二択で考えると必ず行き詰まる

難しさの根本は、多くの現場が「このツールは安全か、危険か」というツール単位の二択で考えてしまうところにあると考えます。しかし実際に問題になるのは、ツールの性能や堅牢性そのものよりも、そこに何を入力するかです。同じツールでも、公開済みのプレスリリースを要約させるのと、まだ公表していない買収案件の資料を丸ごと貼り付けるのとでは、リスクの性質がまったく異なります。つまり本質は「ツールの安全性」ではなく「自社の情報の機微さ」の側にあり、判断の軸をツールから情報へ移さない限り、線引きは安定しないと考えられます。

現場は「グレーゾーン」で毎日判断を迫られている

ルールが「機密情報は入力禁止」の一文だけで止まっていると、現場は日々グレーゾーンの判断を迫られます。顧客との議事録は機密でしょうか。社内の会議メモは。取引先名を伏せた見積もりの数字は。担当者はそのたびに立ち止まり、判断できないまま入力してしまうか、逆に萎縮して生成AIを使わなくなるかのどちらかに傾きがちです。前者は情報漏えいのリスクを、後者は活用の機会損失を生みます。曖昧な一行ルールは、実は両方の損失を同時に抱え込んでいると言えます。

「入れてはいけない」だけでは人は動けない

もうひとつの難しさは、禁止の言葉だけでは人は行動を選べないという点です。「営業秘密を入れてはいけない」と言われても、目の前の資料が営業秘密に当たるかどうかを現場が即座に判断できるとは限りません。むしろ「これは入れてよい」「これは加工すれば入れてよい」「これは入れない」という三段階の見取り図があって初めて、人は安心して使い分けられます。統制の実務は、禁止事項の列挙よりも、判断を助ける区分表の設計に重心を置くべきだと考えます。生成AIの業務利用に伴う不安の構造については、ChatGPT業務利用のセキュリティ不安でも整理していますので、あわせて参照いただくと背景が掴みやすいかもしれません。

本記事の立ち位置

本記事では、生成AIへの入力可否を情報区分ごとに整理する実務フレームを提示します。あくまで一般的な考え方の整理であり、実際の運用にあたっては自社の就業規則・秘密保持契約・個人情報の取り扱い方針、そして業界固有の規制に照らした法務確認が前提になります。ここで示す枠組みは「たたき台」として使い、最終的な線引きは自社の文脈で確定していただく想定です。

― 02 / アプローチ

情報を5区分に分けて入力可否の初期値を決める

線引きを安定させる最初の一歩は、社内の情報をいくつかの区分に分け、区分ごとに「入力してよいかどうかの初期値」を決めておくことだと考えます。ここでは、公開情報・社内限定情報・顧客情報・個人情報・営業秘密という5つの区分を例に、それぞれの考え方を整理します。区分の粒度や名称は自社の既存の情報管理規程に合わせて調整してください。

区分1:公開情報

すでに自社Webサイトやプレスリリース、公開済みの製品カタログなどで外部に出している情報です。これらは原則として生成AIへの入力を許容してよい範囲と考えられます。公開済みの文章を要約させる、言い換える、構成を整えるといった用途は、情報漏えいのリスクが低く、生成AI活用の入口として推奨しやすい領域です。まずはこの区分から使い始めてもらい、成功体験を積んでもらうのが定着の観点でも合理的だと考えます。

区分2:社内限定情報

公開はしていないものの、社内では比較的広く共有されている情報です。一般的な社内マニュアル、業務手順、公表前でも機微性の低い企画メモなどが該当します。この区分は「使うツールの契約条件次第で許容範囲が変わる」層だと考えられます。入力内容が学習に使われない契約になっている法人向けの環境であれば許容しやすく、個人が無償で使う一般向けの環境であれば控える、といった条件付きの扱いが現実的です。ツールの選定と区分の設計はセットで考える必要があります。

区分3:顧客情報

取引先の企業名、案件の内容、見積もりや契約の条件など、顧客に関わる情報です。ここには顧客との秘密保持契約(NDA)が関わることが多く、「自社の判断だけでは可否を決められない」区分だと考えられます。契約上、第三者のサービスへの情報提供が制限されている場合、生成AIへの入力がその制限に抵触する可能性も否定できません。原則は入力を控えめにし、必要な場合は後述する匿名化・マスキングを前提とする、あるいは個別に契約条項を確認する運用が安全側だと考えます。

区分4:個人情報

氏名・連絡先・所属・その他の識別情報を含む、従業員や顧客個人に関する情報です。個人情報の取り扱いは法令の規律を受けるため、この区分は最も慎重な扱いを要すると考えられます。原則として、そのままの形での生成AIへの入力は避け、業務上どうしても必要な場合は識別情報を除去・マスキングしたうえで扱うことを基本方針とするのが無難です。何が個人情報に当たるか、どの処理までが許容されるかは、自社の個人情報保護方針と関連法令に照らした確認が前提になります。

区分5:営業秘密

未公開の技術情報、原価やコスト構造、独自のノウハウ、公表前の経営情報など、社外流出が競争力の毀損に直結する情報です。この区分は原則入力禁止とし、例外を認める場合も、後述するクローズドな環境や厳格な加工を条件とする扱いが妥当だと考えます。特に「秘密として管理していること」が法的な保護の要件に関わる情報については、管理実態と矛盾する取り扱いをしないよう、運用ルールと実際の運用を一致させておくことが重要だと考えられます。

区分表は「初期値」であって固定値ではない

ここで示した可否はあくまで初期値です。同じ「顧客情報」でも、すでに公表されている取引実績なのか、進行中の未公表案件なのかで機微性は変わります。区分表は判断の出発点として使い、迷う事例が出てきたら都度追記して育てていく運用が現実的だと考えます。次の章では、そのままでは入れられない情報を「加工すれば使える」範囲に移す方法を見ていきます。

― 03 / 設計

匿名化・マスキングで「使える範囲」を広げる

情報区分をそのまま適用すると、顧客情報や個人情報を含む多くの業務が「入力禁止」に倒れ、生成AIを使える場面が狭くなりがちです。しかし実務では、識別につながる部分を取り除いたり伏せたりする前処理を挟むことで、活用できる範囲を広げられる場合があります。ここでは代表的な加工の考え方を整理します。ただし、加工の妥当性は最終的に法務・関連部門の確認を要する点を前提としてください。

マスキング:識別情報を伏せる

最も基本的な加工は、氏名・企業名・住所・電話番号・案件名といった識別情報を伏せ字や記号、あるいは「A社」「担当者X」といった仮の呼称に置き換える方法です。たとえば商談の議事録を要約させたい場合、固有名詞をすべて仮名に置換したうえで入力すれば、文章構造の整理という目的は達成しつつ、誰の何の情報かを特定されるリスクを下げられると考えられます。定型的な置換であれば、入力前の前処理として仕組み化することも検討に値します。

匿名化:個人を特定できない状態にする

マスキングより踏み込んだ加工が、個人を特定できないようにデータそのものを抽象化する匿名化です。個々のレコードから識別子を除くだけでなく、他の情報と突き合わせても個人にたどり着けない状態を目指します。ただし、ここで注意が必要なのは、断片的に伏せただけでは「再識別」されうるという点です。役職・所属・時期・案件の特徴などが残っていれば、それらの組み合わせから個人や取引先が推定できてしまう場合があります。どこまで削れば十分かの基準は、対象データの性質によって変わるため、一律の正解はないと考えられます。

要約・抽象化:具体を落として構造だけ使う

もうひとつの有効な発想が、具体的な数値や固有名詞を人の手であらかじめ落とし、構造や論点だけを生成AIに扱わせる方法です。たとえば「ある製造業の顧客で、歩留まりが課題になっている案件の提案骨子を考えたい」という粒度まで抽象化すれば、具体的な社名や数値を伏せたまま発想の壁打ちができます。生成AIを「答えを持たせる相手」ではなく「考えを整理する相手」として使う場合、この抽象化は相性がよいと考えます。

加工に頼りすぎないための線引き

一方で、加工すれば何でも入れてよいと考えるのは危険だと考えます。加工が不十分なまま「匿名化したつもり」で機微情報を入力してしまう事故は起こりえます。実務上は、(1) どの区分の情報はどの程度加工すれば入力を許容するか、(2) 加工の妥当性を誰が判断するか、(3) 判断に迷う場合の相談先はどこか、をあらかじめ決めておくことが重要です。加工の基準を現場任せにすると、人によって深さがばらつき、統制が形骸化します。加工ルールは区分表とセットで運用してこそ機能すると考えられます。より機微な情報を扱う場合は、そもそも外部に出さずに閉じた環境で処理する選択肢もあり、その考え方はクローズド環境でのAIエージェント運用で整理しています。

― 04 / 設計

法人プラン(学習除外)でも残る留意点

「入力内容を学習に使わない契約の法人プランを結んだから、もう何を入れても安全だ」と考える組織は少なくありません。学習除外の契約は確かに重要なリスク低減策ですが、それだけですべての懸念が消えるわけではないと考えられます。ここでは、法人プランを導入してもなお残る留意点を整理します。

「学習に使わない」と「どこにも残らない」は別

学習に利用されないことと、データがサービス提供者側にまったく残らないことは、同じではありません。多くのサービスでは、不正利用の監視や品質改善のために、一定期間ログが保持される設計になっている場合があります。学習除外はモデルにあなたのデータが取り込まれないことを意味しますが、事業者のシステム内での一時的な保持や、委託先での処理までがゼロになるとは限りません。契約時には「学習に使うか」だけでなく「どこに、どれくらいの期間、どのような目的で保持されるか」まで確認することが望ましいと考えます。

アカウント管理と権限設計は自社の責任

契約がどれほど堅牢でも、社内のアカウント管理が緩ければ情報は守れません。退職者のアカウントが残っている、共有アカウントで誰が何を入力したか追えない、といった状態では、事業者側の安全性とは別の経路でリスクが生じます。誰がどの権限で使うか、履歴をどう残すか、退職・異動時にどう権限を回収するかといったアカウントライフサイクルの設計は、契約の内容にかかわらず自社の責任範囲だと考えられます。

入力履歴・会話ログの社内的な扱い

生成AIとのやり取りは、多くの場合ユーザーごとに履歴として残ります。この履歴自体が機微情報を含む二次的なデータになりうる点は見落とされがちです。共用端末で前の利用者の会話が見えてしまう、履歴が意図せず共有される、といった社内側の運用リスクは、契約プランの種別とは無関係に存在します。履歴の保存範囲や共有設定を組織として把握し、必要に応じて制御することが求められると考えます。

連携機能・拡張機能が広げる入力経路

近年は、生成AIを他の業務システムやファイルと連携させる機能、ブラウザ拡張やプラグインなどが増えています。これらは利便性を高める一方で、意図しない範囲の情報が自動的に生成AIへ渡る経路を増やしうると考えられます。どの連携を許可するか、拡張機能の導入を誰が承認するかといった点も、入力可否のルールと同じ枠組みで管理する必要があります。ツール本体の契約だけを見て安心せず、周辺の入力経路まで視野に入れることが、統制の実効性を左右すると考えます。ガバナンス全体の論点はAIエージェントのガバナンスとリスクで体系的に扱っていますので、あわせてご覧ください。

― 05 / 運用

違反を責めない教育設計と運用への落とし込み

優れた区分表を作っても、それが現場に浸透し、日々の判断に使われなければ意味がありません。ここで多くの組織がつまずくのが、ルールを「守らせる」姿勢に寄りすぎることだと考えます。統制の目的は違反者を摘発することではなく、情報を守りながら活用を進めることです。その目的に照らすと、教育と運用の設計は「責めない」方向に振るほうが結果的に機能すると考えられます。

なぜ「責める運用」は逆効果になりやすいか

入力ミスや判断の誤りを厳しく叱責する運用は、一見すると規律を高めそうに見えますが、実際には報告をためらわせ、問題を水面下に隠す方向に作用しがちです。「これは入れてよかったのか」と迷ったときに、気軽に聞ける空気がなければ、人は自己判断で入力してしまうか、あるいは生成AIそのものを避けるようになります。前者は事故を、後者は形骸化を招きます。心理的な安全性のない統制は、見かけの厳格さと引き換えに実態を見えなくすると考えます。

「良い例」を配ることが最良の教育になる

禁止事項を並べるより、「こういう使い方なら安心」という良い例を具体的に配るほうが、現場は動きやすくなります。公開情報を要約させる、固有名詞を伏せて議事録を整える、抽象化して発想の壁打ちに使う——こうした安全な使い方の実例集は、区分表という抽象的なルールを日々の行動に翻訳する役割を果たします。教育設計の重心を「禁止の周知」から「安全な活用例の共有」へ移すことを提案します。研修としての具体的な組み立て方は従業員向け生成AI研修の設計で詳しく整理しています。

迷ったら聞ける相談導線を用意する

どれだけ丁寧な区分表を作っても、判断に迷う事例は必ず出てきます。重要なのは、迷ったときに気軽に確認できる導線を用意することです。チャットの相談チャンネル、担当窓口、簡単な判断チェックリストなど、形式は問いませんが、「迷ったら入力する前に聞ける」状態をつくることが事故の予防につながると考えます。そして寄せられた質問は、区分表や事例集を育てる貴重な材料になります。運用は一度作って終わりではなく、現場の疑問を吸い上げて更新し続けるサイクルとして設計することが望ましいと考えます。

典型的な落とし穴

― 06 / 運用

区分ルールを「回り続ける仕組み」にする

ここまで情報区分と加工、契約上の留意点、教育設計を見てきました。最後に、これらを一度きりの施策で終わらせず、組織のなかで回り続ける仕組みにするための運用の勘所を整理します。ルールは静的な文書ではなく、更新され続けるプロセスとして捉えることが重要だと考えます。

公認ツールの提供と区分ルールをセットにする

入力可否のルールは、公認ツールの提供と一体で設計してこそ機能します。使ってよい環境を用意しないまま制限だけを課すと、現場は自分の判断で手近なツールを使い始めます。会社として「これを使ってよい」という選択肢を先に示し、そのうえで「この環境では何を入れてよいか」を区分で定める——この順序が、統制と活用を両立させる基本形だと考えられます。統制は禁止から始めるのではなく、安全な選択肢の提供から始めるという発想の転換が要になります。

区分表・事例集・相談ログを一元管理する

区分表、安全な活用事例、寄せられた相談とその回答は、バラバラに管理すると更新が止まります。これらを一箇所に集約し、誰もが参照でき、疑問が出たら追記される状態にしておくことが望ましいと考えます。社内ナレッジ基盤のような形で、ルールと事例と相談履歴が結びついて蓄積されていく仕組みがあれば、判断のばらつきは時間とともに収束していくと考えられます。運用の本丸はツールの導入そのものより、この知識を回す設計にあります。

定期的に見直すトリガーを決めておく

生成AIのサービス仕様や契約条件、関連する法令やガイドラインは変化します。ルールを陳腐化させないためには、「四半期ごと」「契約更新時」「新しいツールを導入するとき」といった見直しのトリガーをあらかじめ決めておくことが有効だと考えます。変化があったときに誰が確認し、どう反映するかの担当を明確にしておけば、ルールは生き続けます。逆に見直しの契機を決めていないと、どんなに精緻な区分表も少しずつ実態から離れていきます。

現場での検証を通じて一緒に確かめる

私たちNsightは、産業用の画像検査やVLM/AIの領域に加えて、AI研修や社内AIエージェント・業務OSの内製化支援に取り組んでいます。元キーエンス画像処理事業部で現場の品質と歩留まりに向き合ってきた監修者の知見を踏まえて言えるのは、机上のルールは現場で回してみて初めて穴が見えるということです。情報区分の線引きも、実際の業務でどこに迷いが生じるかを観察し、事例を拾いながら調整していくプロセスが欠かせないと考えます。本記事で示した枠組みはあくまで一般的なたたき台であり、自社の契約・規程・法令に照らした法務確認と、現場での検証を前提にしていただく想定です。線引きの初版づくりから、公認ツールの提供、教育設計、運用の定着まで、現物・現場での検証を通じて一緒に確かめながら進めることを推奨します。どこから手をつけるべきか整理したい段階でも、お問い合わせからお気軽にご相談ください。

― 07 / 関連

関連記事・関連ソリューション

― 08 / FAQ

よくある質問

公開情報なら生成AIに入れても本当に問題ありませんか。

公開情報は入力を許容しやすい区分だと考えられますが、「自社が公開済み」であることの確認が前提です。他社の公開情報や、公開範囲が限定的な資料は扱いが変わる場合があります。また、公開情報であっても大量に集約すると別の機微性を帯びることがあるため、区分表を出発点にしつつ、迷う場合は相談導線で確認する運用を推奨します。

学習に使わない法人プランを契約すれば、機密情報も入力してよいですか。

学習除外は重要なリスク低減策ですが、それだけで機密情報を無条件に入力してよいことにはならないと考えられます。データの保持期間や監視目的でのログ保存、社内のアカウント管理、履歴や連携機能を通じた入力経路など、契約以外に残る留意点があります。営業秘密など最も機微な情報は、加工やクローズド環境を前提とし、法務確認を経て扱うことが安全側だと考えます。

匿名化すれば顧客情報や個人情報を入れても大丈夫ですか。

適切な加工は使える範囲を広げますが、「匿名化したつもり」で再識別されてしまう事故が起こりえます。役職・所属・時期・案件の特徴などが残ると、組み合わせから個人や取引先が推定される場合があります。どこまで削れば十分かはデータの性質によって変わり、一律の正解はありません。加工の妥当性を誰が判断するかを決め、契約や法令に関わる部分は法務確認を前提とすることを推奨します。

ルールを作っても現場が守ってくれるか不安です。どうすれば浸透しますか。

禁止事項を並べるより、公認ツールを提供したうえで「こう使えば安心」という具体的な活用例を配るほうが浸透しやすいと考えます。迷ったときに気軽に聞ける相談導線を用意し、違反を責めるのではなく相談を歓迎する空気をつくることが、結果的に事故の予防につながります。寄せられた質問を区分表や事例集に反映し、更新し続ける仕組みにすることが定着の鍵だと考えます。

この区分ルールは法務チェックなしで社内展開してよいですか。

本記事の枠組みは一般的な考え方の整理であり、そのまま最終ルールとして展開することは推奨しません。就業規則や秘密保持契約、個人情報の取り扱い方針、業界固有の規制との整合は組織ごとに異なります。情シス単独で確定せず、法務や関連部門の確認を経てから展開することを前提にしてください。たたき台としてご活用いただき、現場での検証を通じて自社の線引きを固めていく進め方を推奨します。

― REVIEWED BY
嶋野(元キーエンス画像処理事業部 開発エンジニア)
キーエンス画像処理事業部での実務経験をもとに、産業用カメラ・照明・光学系・検査装置の開発に従事し、現在はNsightの技術コンテンツ監修を担当。プロフィール詳細 →

生成AIの線引きづくりから運用定着まで、一緒に確かめませんか

情報区分の初版づくり、公認ツールの提供、教育設計、そして現場での検証まで。AI導入・業務自動化・内製化支援の観点から、自社の文脈に合った線引きと運用を一緒に組み立てます。まずは現状の整理からお気軽にご相談ください。

AI導入・内製化支援に相談する